食堂かたつむり
今どんな本が読まれているのか、話題になっているのか、という情報収集には全く無頓着なので図書館でテキトーに選ぶというのが今までの本の選び方だったけど、最近ネットで図書館のシステムを使い倒す、という方法を覚えた。これ便利。
読みたい本の検索やリクエストはもちろん、新刊入荷本や人気本の検索ができて予約もできる。
本の題名が判らなくても「緊縛」やら「蠟燭」やら「座敷牢」で検索をかけてみるといいかもしれない。
そんな中でタイトルが気になった「食堂かたつむり」を予約してみた。
すっかり忘れていた半年後、順番が回ってきましたがな。
半年??そういえば予約が数百人いたっけ。
同棲していたインド人の恋人に全財産を根こそぎ持っていかれ、故郷に帰った傷心の主人公が「一日一客、メニューは事前面談の上」食堂かたつむりをオープンする。そして彼女はゆっくりと再生していくのだ。というストーリー。
おお。表現は素敵だし淡麗な文章は好みだなあ。
と、気持ちよく読み進めていたのは「お妾さん」のエピソードまで。
いくらファンタジーといえども「その情景」が見えてこなければ話にならない。
次々と魔法のように仕入れてくる食材。散文的とも言えるエピソードの数々。
期待を持たせて肝心なところで、本来の描写すべきであろう所がすっぽりと抜け落ちていたり、唐突にお涙頂戴劇に急降下する予定調和ともいえる展開にもちぐはぐさを感じてしまった。
「スローライフでロハスな暮らし」とか「私のライフスタイルは・・・」とか「自分探し」などと平然と口する連中に対する違和感や嫌悪感をこの小説に感じる。
エルメスのエピソードとか「食は動物の犠牲の上に成り立っているのだよ。」という至極真っ当なメッセージも過剰ともとれる描写で表現すれば、そのスローライフ的陳腐さが消えて万事オッケ的な勘違いが見え隠れするような気がするのじゃが。
結局、何故この本が話題になっていたのかが判らない。
読み終わってみると当初の流麗な表現も借り物のような気がしてくるし。
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